東日本大震災からやがて一年、猶復興の目処も立たない被災地の状況は察する程に心が痛みます。今冬は殊の外寒く、大雪の被害が続出、一日も早い春の訪れが待たれる昨今、毎年桜の開花の好季節に催されるのが東書藝展であります。以前から頻りと囁かれていて今日まで免れている、東海大地震に思いを馳せると、無事を感謝せずにはいられません。
今年の新聞紙上での本展のキャッチフレーズは「人生を彩る、書の世界」としました。「書は人なり」「書は人格の表出」などと謂われていますが、たしかにどの書にも書者の一念が籠められています。漢字は全て一点一画を組み合わせた表意文字であり、墨場必携の巻頭の六儀解に詳しく述べられていますが、その書法(毛筆)の原点は、トン・ツー・トンの三節法で貫かれています。一・二・三(いち、にい、さん、ひいふうみい)は数の原点であります。人は人から生まれ、人生を経て死を迎えます。天地人という花道に於ける形の原点も宇宙の理からきているようでもあります。書に於ける毛筆の技は、千変万化、二度と同じ表情は出せません。宇宙の生気を心に満たし、その気を鎮めて紙に対し筆を下ろす時のあの緊張の一瞬こそが書作の醍醐味と謂えましょう。古代漢民族の敬天思想から造られた漢字を書す時は等しくその崇高な精神を忘れてはならないと思います。
さて今年の東書藝展、一体どのような作品群となるか、その開幕が楽しみであります。書を心から愛する書家の集団として、「東書藝」は日本のど真中名古屋を拠点としてこれかも更に発展してゆくに違いありません。